Q&Aのコーナーです。
病気に関することを質問形式で分かりやすくまとめてみました。気になることは、お問い合わせからご質問下さい。
病名や診断について
- デビック病(Devic病)とは何ですか?
- 視神経脊髄炎のことです。英語では、Neuromyelitis optica(ニューロミエライティスオプティカと読みます)です。NMOと省略されます。
- 指定難病の病名に、多発性硬化症/視神経脊髄炎と二つの病気が書いてありますが、私はどちらの病気か分かりません。
- 発症してから経過の長い人は、途中で診断名が変わっているかもしれませんので、先生に確認してみて下さい。
主治医の先生が診断に苦慮している症例もあると思われますが、その時点で、最も可能性の高い診断名に沿って、治療方針が決められていると思います。 - NMOはどうやって診断するのですか。
- 1999年、2006年、2015年に海外で診断基準が発表されています。指定難病は、2006年の診断基準を使っています。
- NMOSDとはなんですか?
- 2015年アメリカから新しいNMO診断基準が発表されました。NMOがより広い疾患と捉えられるようになり、NMOSD(NMOスペクトラムディソーダー)と呼ぶことになりました。スペクトラムは、連続するものという意味です。
日本では、アクアポリン4抗体発見により、多発性硬化症(MS)患者さんの中からNMO患者さんを診断しやすくなった経緯があるため、アクアポリン4抗体陰性例が含まれると、逆戻りしていることになりますが、NMOSDはNMOに準じて対応することが重要だと思われます。
アクアポリン4抗体が陰性の場合には、MRIでNMOに特徴的な病変(吃逆の原因となる延髄病変など)を確認する必要があります。 - 病気の程度(重症度)はどのように決められていますか?
- EDSS(イーディーエスエス)という多発性硬化症で使われてきた点数(0から10点、0.5点刻み)で現されます。点数が大きいほど重症となります。神経内科を専門とする先生が神経学的な診察(打鍵器や音叉などですね)をすることで、定期的に外来で判断しています。
- 脊髄炎を発症しましたが、NMOではないと言われています。
- 悪性リンパ腫、脊髄腫瘍などの早期治療を要する疾患を否定することが大切です。多発性硬化症(MS)の鑑別はもちろんですが、膠原病があることが分かったり、ビタミン欠乏や寄生虫などが原因となることもあります。出来れば、専門病院の受診をして下さい。
治療について
- ステロイドの副作用が出ないこともあるのでしょうか?
- 副腎皮質ホルモンは体内でも産生されており、プレドニン®では1錠分に相当する5mg程度と言われています。しかし、5mgを3ヶ月内服すると、骨粗鬆症による骨折のリスクは高まることが知られており、やはり全身への影響はあると考えられています。顔が丸くなるムーンフェイスやニキビ、多毛、肥満などの美容面のみならず、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの内科疾患、白内障や緑内障の眼科疾患、精神症状、大腿骨頭壊死なども知られています。
- 多発性硬化症の治療薬は、NMOに効きますか?
- 多発性硬化症の治療薬には、自己注射のインターフェロンβ製剤やグラチラマー酢酸塩、内服薬であるフィンゴリモド、点滴で投与するナタリズマブがあります。これらは、NMOの治療薬としての治験は行われていないため、有効性は不明です。むしろ、これらをNMOの患者さんに使用したら無効であったと報告されていますので、通常使用されることはありません。
- 症状が良くなりませんが、血漿交換療法は有効でしょうか?
- 以前の後遺症である場合、回復は難しいと思われます。ただし、再発からの期間が短く、病気が活発な場合(再発が十分に落ち着いていない場合)には有効性が期待できるかもしれません。MRI等の評価も大切でしょう。
症状について
- 視神経炎ではどんな症状が出ますか?
- 眼痛(目を動かすと目の奥が痛い)、視力低下(曇りガラスのように見えにくい)、視野異常(見えない部分があり、時に上や下の半分が見えないこともあります)に気づくことが多いです。これらの症状は、片目や両目のどちらでも起こります。
- 横断性脊髄炎とは何ですか?
- 脊髄炎が左右へ広がった時の病名であり、様々な原因で起こります。炎症が生じた部分から下への脳からの命令が途切れるため、両足の麻痺(対麻痺)、感覚障害(感覚が鈍くなったりしますが、逆にシビレ感や痛みが生じることもあります)、排尿障害(尿が出ないなど)等の症状が出ます。
- 難治性吃逆とは何ですか?
- 吃逆(きつぎゃく)とは、しゃっくりのことです。NMOの患者さんに見られる症状として特徴的なものであるため、2015年の新しい診断基準では、視神経炎や脊髄炎と並び、NMOの主要な症状であると記載されています。
- 歩きにくさがありますが、良くならないでしょうか?
- 再発がない期間(寛解期)に後遺症は回復しますが、だんだん足が硬くなってくることが多く見られます。痙縮と呼ばれます。
薬で柔らかくする薬がありますが、ある程度の固さは筋力増強の役割も持つため、リハビリテーションで正しい歩行練習を継続しながら、薬剤調整すると良いでしょう。 - ベッドに横になると、足が勝手に跳ねるようになりました。
- ミオクローヌスと呼ばれるもので、てんかんの薬で改善することがあります。
- 足が腫れやすくなりました。
- 足の筋力が低下すると、筋肉の収縮を利用して返っていた静脈の血液が心臓に戻りにくくなるためです。日中の下肢の運動、夜間の下肢挙上、また、食事の塩分を控えるとむくみにくくなります。弾性ストッキングも有効です。
- いつになったら痛みは取れるのでしょうか?
- 後遺症の中で、最も厄介なものです。難治性疼痛と呼ばれ、様々な薬剤(てんかんの薬、不整脈の薬、抗うつ薬など)の効果を確かめながら試していくことが多いと思います。
頭痛のように薬を飲んだらすぐに治ることは難しいのですが、痛みを忘れて活動できる時間を増やすことを目標にすると良いと思います。 - トイレが我慢しにくくなることはありますか?
- 脊髄炎の後遺症で、切迫性尿失禁はよく見られる症状です。我慢しやすくなる薬が有効ですが、飲みすぎると出にくくなり残尿が増える方もおられます。薬は神経内科の先生から処方してもらえますが、難しい場合は泌尿器科を受診して下さい。
新型コロナウイルスについて
- 新型コロナウイルスにかからないか心配です。
- 空気感染するウイルスではありませんが、咳などで飛んだ唾液が届く距離で人と接触すること、空中に飛んだ唾液などが長時間浮遊するような環境に長くいるといった、いわゆる3密を避けた生活をしてください。一般的な注意点としては、規則的な生活や睡眠はもちろん、喫煙者は禁煙するなど、意識的に生活習慣を改善して下さい。
コロナは、体や手についただけでは感染しません。外出後は、手洗いを必ず行い、汚れた手のままで、目・鼻・口を決して触らないで下さい。 - 薬は続けて良いでしょうか?
- 感染リスクに関しては、ステロイドや免疫抑制剤(アザチオプリン(イムラン®等)、タクロリムス(プログラフ®等)など)、今回の治験で使用したリツキシマブも含めてすべて、感染リスクを高める可能性があると考えられます。
しかし、薬剤の減量によるNMO再発リスクは避けなければなりませんので、新型コロナウイルス感染と再発リスクのバランスを見極める必要があります。基本的には、現在の治療を継続した方が良いと考えられますが、かかりつけ医との相談をお勧めします。
万が一、新型コロナウイルスにかかってしまった場合は、病状に応じた対応が必要になります。同じ指定難病の多発性硬化症の薬であれば、リバウンドが生じやすいフィンゴリモド以外は、しばらくの間、中止しても比較的安全と考えられています。しかし、NMO治療では急な中止は出来ません。免疫抑制剤は中止してステロイド単剤が勧められますが、入院主治医とかかりつけ医と連携を持つことが大切でしょう。 - コロナ感染疑いの人と接触していたことが分かりました。
- 新型コロナウイルスは感染しても、無症状の人の方が多い(80%程度)のが特徴ですが、発熱や咳、喉の痛み、下痢など症状が出て発症する人の場合、これらの症状が出る前(潜伏期間といいます)から、すでに感染させる力があることが判明しています。
発症前2日も含めて、接触があったかどうかが目安になりますが、普段から3密を守り、マスクなどの予防をした状態で会っていたのであれば、濃厚接触者として考える必要はありません。